【富山】 庄川口駅:冬の夕陽と路面電車


富山県射水市庄川本町に位置する庄川口駅は、万葉線新湊港線の駅のひとつである。
庄川の河口近くに設けられたこの駅は、川と海が交わる地形の狭間に、ひっそりとたたずむ小駅。
周囲は住宅地と河川敷が広がり、地元住民の日常の足として長年にわたり親しまれてきた場所である。

この駅のある万葉線は、富山県高岡市の高岡駅停留場から射水市の越ノ潟駅までを結ぶ路面電車で、
高岡軌道線と新湊港線の2路線によって構成されている。
庄川口駅はそのうち新湊港線に属しており、越ノ潟方面と六渡寺方面をつなぐ中間駅として機能している。

この駅の歴史をたどると、1932年11月9日、越中鉄道によって新湊東口(現・東新湊駅)から当駅間が開業したのが始まりである。
翌1933年12月25日に庄川口から新伏木(現・六渡寺)間が延伸開業した際にはいったん廃駅となったが、
1952年(昭和27年)8月15日に射水線の駅として事実上再開業を果たした。

その後、1943年に越中鉄道が富山地方鉄道に合併されて射水線となり、1966年には富山新港の建設にともなう射水線の分断によって加越能鉄道に譲渡され、新湊港線の駅となった。
2002年には第三セクター・万葉線株式会社の発足とともに現在の万葉線の駅として引き継がれ、今日に至る。

なお、1976年9月には台風の影響で庄川の鉄橋が流失し、新湊港線は一時不通となった危機もあった。廃線の瀬戸際に立たされながらも沿線住民の存続運動によって翌1977年10月に復旧を遂げた経緯は、この地域にとってひとつの誇るべき歴史である。

駅のすぐそばを流れる庄川には、万葉線の鉄橋が架けられており、電車が川を渡る場面は撮影ポイントとしても知られる。
また、駅に隣接する新庄川橋は国道415号の橋で、1938年に架けられたゲルバー式鉄筋コンクリートの橋が現存しており、上下2本の橋が並ぶ独特の構造をもつ。

主要拠点からのアクセスは以下の通りである。
万葉線を利用する場合、JR高岡駅から万葉線に乗車し約45分で庄川口駅に到達する。
車の場合、北陸自動車道小杉ICから約15分、高岡市街から国道8号経由で約25分が目安となる。
新幹線利用の場合は、北陸新幹線・新高岡駅からJR城端線であいの風とやま鉄道の高岡駅に移動し、その後万葉線に乗り換えるルートが一般的だ。




夕暮れ時の庄川口駅ホーム。西の空がオレンジと藍色のグラデーションに染まるなか、駅舎と電柱・架線のシルエットが浮かび上がる。遠景には庄川沿いの低山と、工場の煙突からたなびく煙。人影のないホームに静寂が満ちている。

千利休
千利休

織部殿、この空の色はなんじゃろう。橙でも紅でもない、かといって暗くもない……茶室の壁によく似た、ちょうどよい曖昧さがあるのう。

古田織部
古田織部

誰もいないホームに電柱の影と架線が幾重にも重なって、侘びた駅舎のシルエットが乙です。

千利休
千利休

遠くに煙がたなびいておるのう。工場の煙じゃろうか。湯の湯気に似ておる。

古田織部
古田織部

富山は鉄と電気と薬の土地。射水市は産業の匂いと漁の匂いが混ざり合った場所です。そこに路面電車が走る。これぞ乙な取り合わせ。



夕陽を背後に浴びながら庄川口駅に入線してくる万葉線のアイトラム。老朽化した木造の待合室と、近代的な流線形の車体の対比。


千利休
千利休

おお織部殿、これは……古い小屋の前に、ずいぶんと滑らかな鉄の塊が来たものじゃのう。なんとも奇妙な顔をした乗り物じゃ。

古田織部
古田織部

アイトラムですな。2004年に導入された万葉線の新型低床車両で、床が低くて乗り降りしやすい設計ですぞ。角張っていないフォルムを見てください。歪みの美とはまた違う、丸みで勝負してきた乙な車両ですな。

千利休
千利休

古びた待合室と新しい電車、古いものと新しいものが隣に立っておる……それはそれで一興かのう。

古田織部
古田織部

廃線寸前にまで追い詰められながら、住民の声で甦り、さらに新しい車両まで入れた。古さという器に新しい茶器を向かい入れたのです。



庄川口駅の駅舎正面。沈みゆく夕陽の橙色の光が、木張りの外壁を温かく照らし出している。左手には青い鉄骨の橋梁(新庄川橋)の一部が覗き、駅の土台となるコンクリートの質感と木のぬくもりが共存する。


千利休
千利休

木じゃのう。壁が木じゃ。石でも金属でもなく、木を使うておる。茶室もそうじゃが、木は光を吸うて、光を返す。この夕陽の染まり方……これは作れぬ色じゃのう。

古田織部
古田織部

駅名標が正面にどんと据えられているのが潔いですな。「庄川口」。余計な飾りがない。それでいて屋根の縁に等間隔に並ぶ小さな電球が、夜になればぽつりぽつりと灯るのでしょう。その想像がまたよろしいですな。

千利休
千利休

左に青い橋梁が少し覗いておるのう。あれは国道の橋じゃろうか。あえて全部見せず、端だけが見える。庭石を一個だけ飛び石に使うような、引き算の見せ方じゃのう。

古田織部
古田織部

新庄川橋ですな。1938年竣工の古い橋で、2本の橋が並んでいる変わった構造ですぞ。万葉線の鉄橋と国道の橋と、2本の橋が庄川に並んで架かっています。




庄川の鉄橋を渡る万葉線のラッピング車両と燃え上がる夕陽。


千利休
千利休

良い夕焼けじゃのう。見つめすぎて網膜が焼けるようじゃ。

古田織部
古田織部

太陽を直視したらいけません。

千利休
千利休

電車の色も、川の色も、空の色も……夕陽がすべてを橙に塗り直しておる。派手な車体も、黒い鉄橋も、みな同じ色に染まっておるのう。

古田織部
古田織部

左の煙がまたよい仕事をしておりますな。

千利休
千利休

電車が去れば、この光の道も消える。煙も散る。川だけが、また静かに流れ続けるのじゃろうのう。……来てよかったと思える場所というのは、たいていこういう何もない場所じゃ。




コメント